肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

抗がん剤副作用対策 白血球減少(感染症・FN)

 骨髄抑制は化学療法時によく見られる副作用で、骨髄抑制により生じる好中球減少は、化学療法中の患者さんにおける感染症発症の、最大の危険因子とされています。発熱好中球減少症(Febrile Neutropenia)に対する治療開始の遅れは命にかかわる状況となります。そのため、発症予防早期発見が大変重要になります。

 白血球数(好中球数)は化学療法時開始から7~14日目に最低値に至ることが多いですが、減少の程度や持続時間は治療レジメンや状態により変動します。セルフケアとして、”感染予防”と”発症早期の対応” ができることが大切です。

 ”感染予防”・・手洗い、うがい、口腔ケア、マスクの着用
 ”発症早期の対応”・・好中球が減少し感染症にかかりやすくなった時期の症状を把握しておく

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感染しやすい部位と主な症状*

部位 症状
口腔 口腔内の発赤・腫れ・痛み・歯の痛み
上気道 鼻水,のどの腫れ、痛み
肺・気管支 咳、痰、息苦しさ
消化器 腹痛、下痢、吐き気
肛門 肛門周囲の発赤・腫れ・痛み
尿路 尿のにごり、尿意の増加、排尿時痛、残尿感
皮膚 唇や皮膚の痛み、水疱
その他 38度以上の発熱、寒気、震え、頭痛、関節痛など

軽度
<症状>特に自覚はない。
<対応>治療レジメンや免疫状態から感染リスクを確認する。血液データで白血球数・好中球数の低下傾向を確認する。
<セルフケア>しっかり手洗いうがい口腔ケアマスクの着用を行って感染を予防する(そうじや植物、ペットの世話のあとは特に注意する)。毎日熱を測る習慣をつける。

中等度
症状>口の中の痛み(口内炎)、お尻の痛み(肛門痛)など(上記:感染しやすい部位と主な症状)

対応発熱性好中球減少症(FN)の高リスク患者(高齢者、FNの既往がある)では、予防的G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)投与が推奨されている。外来患者では発熱時すぐに内服ができるよう、抗菌薬を処方しておく場合もある。
セルフケア発熱(37.5度以上)時や症状出現時、すぐに抗菌薬の内服や受診ができるようにする。

重度
<対応>血液検査(血算・白血球分画・生化学検査、静脈血培養)、必要に応じてX線、尿検査を実施。バイタルサインを測定して全身状態を把握。FNの場合はただちに広域抗菌薬の投与を行うとともに、感染源を検索(口腔・鼻腔粘膜、爪周囲、股部、肛門周囲、静脈カテーテル刺入部などの感染兆候を確認)
セルフケア>発熱の程度や経口摂取の状況を知らせる。すぐの受診が難しければ、入院してFN治療を行う。

 
NCI-CTCAE ver4.0(National Cancer Institute:米国国立がん研究所-Common Terminology Criteria for Adverse Event:有害事象共通用語基準)による重症度評価ものせておきます。

発熱性好中球減少症(FN)の重症度評価

Grade 1 定義なし
Grade 2 定義なし
Grade 3 好中球数<1000/μLで、かつ、1回でも38.3度を超える、または1時間を超えて持続する38度以上の発熱
Grade 4 生命を脅かす;緊急処置を要する

好中球数減少の重症度評価

Grade 1 <~1500/μL
Grade 2 <1500~1000/μL
Grade 3 <1000~500/μL
Grade 4 <500/μL

以上です。

YORi-SOUがんナーシング 2018 vol.8 No.4 より抜粋しました
ぴのこ拝

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抗がん剤副作用対策 下痢

下痢を引き起こしやすい薬剤 
 下痢は電解質異常脱水、腸粘膜の破たんによる細菌侵入など、生命にかかわる可能性のある症状です。特に、下痢につながる有名な薬剤はイリノテカン(カンプト®)で投与前に副作用を予知する遺伝子変異の診断が保険適応になったことも知られています。イリノテカン(カンプト®)は遅発性の下痢を引き起こすこともあり、下痢も便秘も生じないようにコントロールすることが必要です。

 分子標的薬であるアファチニブ(ジオトリフ®)は連日の経口摂取が必要な薬剤であり、下痢の発生頻度が非常に高いことで知られています。速やかな止瀉薬(下痢止め)の内服で重篤化を防ぎ、抗がん薬の投与を継続できるようにすることが重要です。


発症時期と支持療法
 下痢の発症タイミングとしては、原因となる抗がん薬の投与中から数時間以内に起きる早発性の下痢と、投与後24時間以降に生じる遅発性の下痢があります。好中球減少の時期と重なると、重篤全身の感染症へ移行するため、特に注意が必要となります。

 高齢者や進行したがん患者では、脱水症状(皮膚の緊張低下・乾燥、口渇、強い倦怠感、脱力感)や電解質異常を引き起こすため、外来通院中の場合は受診の目安を知っておく必要があります。
下痢が生じた際には、尿量の低下口腔内の乾燥体重減少などに注意して、水分、スポーツドリンク、刺激や脂質の少ない食事などを摂取し、重篤な場合は腸管の安静を保つために絶食にし、輸液を行います。休息をとり、心身の安静を保ちます。

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下痢の臨床的な重症度
発症のタイミングと持続時間
下痢の回数と量、性状
随伴症状の有無と程度
で総合的に考えます。

 
軽度
 便の性状の変化を確認する(参考:ブリストル便形状スケール)・・いつもより水っぽい。ご飯を食べた後下痢になる。便やおしっこを漏らしてしまうことがある。

対応
⇒症状改善のための支持療法を検討・・ロペラミド(ロペミン®)の内服を検討、イリノテカン(カンプト®)投与中の早発性下痢にはアトロピン静脈注射を検討。遅発性下痢の予防として、炭酸ナトリウム半夏瀉心湯を内服。便秘も回避する。
⇒食事指導・・・乳糖を含む食品や刺激物、脂質の多い食品を避ける。
症状の経時記録をする
⇒トイレに行きやすい環境の調整

中等度
 腹痛や便失禁がある、水様便が出る。便意がない時にも腹痛や吐き気がする

対応
ロペラミド(ロペミン®)の内服に加えて、内服抗がん薬に関しては、休薬、減量を検討する。感染性腸炎と鑑別し、抗菌薬の内服を検討する。
⇒皮膚のバリアを守り感染を予防する・・・肛門周囲は低温・低圧で温水洗浄し、石鹸などで洗いすぎない。
止瀉薬(下痢止め)の内服時間や回数、下痢の経時記録を残す

重度
 水様便が1日に何度も生じ、24時間以上継続する。発熱・吐き気・尿量減少がある。下痢止めが効かない。

対応
入院加療。必要時、輸液療法と抗菌薬の投与を検討。原因となる抗がん薬は中止、再開時は減量を検討。
⇒消化管の安静を保ち、点滴で水分と電解質を補う。
⇒できるだけ体力を温存する。休息をとり、心身の安静を保つ。

下痢の重症度評価

Grade 1 ベースラインと比べて<4回/日の排便数増加
Grade 2 ベースラインと比べて4~6回/日の排便数増加
Grade 3 ベースラインと比べて7回以上/日の排便数増加;便失禁;入院を要する
Grade 4 生命を脅かす;緊急処置を要する


参考:ブリストル便形状スケール
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以上です
YORi-SOUがんナーシング 2018 vol.8 no.4  メディカ出版 より抜粋しました
ぴのこ拝

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抗がん剤副作用対策 疲労・倦怠感

 疲労・倦怠感はがん患者が訴えるもっとも高頻度の症状の一つであり、複数の要因によって引き起こされることや病態が刻々と変化することも多いため、常にモニタリングや評価を行い、病態を検討して対処する必要があります。確立された対処法はないため個人の状態に合わせて個別に対応することが必要となります。

定義

 疲労・倦怠感は一般的に「エネルギー不足が原因となって苦痛や種々の機能低下が引き起こされる状態」のことである。特にがんに伴う倦怠感は「最近の活動に合致しない、日常生活機能の妨げとなるほどの、がんまたはがん治療に関連した、つらく持続する主観的な感覚で、身体的感情的かつ/または認知的倦怠感または消耗感」と定義される。(NCCN:全米総合がんセンターネットワークガイドラインより)

 症状は次のように大別されます。

身体的倦怠感 だるい、疲れやすい、(体が)重い
精神的倦怠感 やる気が出ない、興味が持てない
認知的倦怠感 忘れっぽい、注意力が散漫、言い間違いが増えた


 抗がん薬投与による疲労・倦怠感は、薬剤そのものによる有害事象である場合だけでなく、悪心・嘔吐や食欲不振による脱水栄養障害、貧血、電解質異常、甲状腺・下垂体機能異常、感染などさまざまな事象によって引き起こされる場合も多いです。


疲労の重症度評価

Grade 1 休息により軽快する疲労
Grade 2 休息によって軽快しない疲労:身の回り以外日常生活動作の制限
Grade 3 休息によって軽快しない疲労:身の回りの日常生活動作の制限
Grade 4 (定義なし)

倦怠感の重症度評価

Grade 1 だるさ、または元気がない
Grade 2 だるさ、または元気がない:身の回り以外日常生活動作の制限
Grade 3 (定義なし)
Grade 4 (定義なし)

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対策

□エネルギー管理:体力をコントロールして消耗を避ける
優先順位を設定してスケジュール調整をする、委任(今まで自分でしてきたことの一部を他人に任せる)、昼寝の制限(1時間以内)、並行作業を避ける(一度に複数のことをせず、ひとつひとつ片づける)

・倦怠感の少ない時間帯に、優先度が高くエネルギーが必要なことを行う、使用頻度の高いものは手の届く範囲におく、合間に休憩をとる。

□気分転換
ゲーム、音楽、読書をする。できる限り社会生活を維持して、家族・友人との交流を保つ

□運動
疲労・倦怠感やQOLを改善する場合がある。楽しんで行うことのできる運動を選ぶ。短時間で軽めの運動から始め、徐々に時間と強度を上げる。可能であれば、ウォーキングやジョギング、水泳などの持久運動抵抗運動を織り交ぜる。理学療法作業療法、ヨガ、太極拳、気功など

□マッサージ

認知行動療法を受ける

□栄養療法指導を受ける

□副腎皮質ステロイド
・ベタメタゾン0.5mg/日で開始し、0.5mgずつ増量
・デキサメメタゾン4㎎/日で2週間投与


漢方薬
補中益気湯十全大補湯、人参養栄湯

 疲労・倦怠感はさまざまな疾患に共通の症状であり、既往歴や治療中の合併症にも注意が必要です。大変つらい症状ですが、個人差があり、セルフケアが大事になると思います。

以上です。

がん薬物療法副作用管理マニュアル 疲労・倦怠感より抜粋しました
ぴのこ拝
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抗がん剤治療中・後の運動

 がん化学療法中・後の個別の症状に関しては、有酸素運動や筋力トレーニングを実施することが、運動耐用能、倦怠感、免疫機能、不安や抑うつの改善につながるとして、米国がん協会(*1)や日本がんリハビリテーション研究会のガイドライン(*2)で推奨されています。

 運動実施により有害事象を軽減することで抗がん薬治療のアドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って自ら行動すること)を向上する報告があり、支持療法として期待されています。

 がんサバイバー向けの複数のガイドラインにおいても、週150分程度の有酸素運動など、身体活動量の目標値はあるものの、始めはどのようなステップでも安静から脱却することが推奨されています。

 一方で患者が運動を断念する要因として、心地よくない、体調が悪い、気分が乗らない、人目が気になる、疲れる、忙しいことが挙げられます。特にがん治療中は好中球減少に伴う易感染症、血小板減少に伴う易出血性、心機能障害などに伴う易疲労性など配慮が必要です。

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運動における基本留意事項
・貧血・倦怠感がある場合は症状が改善するまで日常生活を優先して体力を調整する

・骨に問題がある場合はけがのリスクの高いスポーツを避ける

疲労が強い場合は1日10分程度の軽い運動を心掛ける

・末梢神経障害や失調などにより転倒やふらつきの危険がある場合は自転車エルゴメーターなど転倒リスクの少ない運動を選ぶ

・感染リスクに注意する
  ①公共のジムやプールは白血球が安定してから利用する
  ②放射線治療時など皮膚が脆弱な期間はプール(塩素曝露)を避ける
  ③カテーテルや栄養チューブ留置時は水が入り込まないように注意する

・併存疾患がある場合は医師に相談して安全に実施できる活動を調整する

 がんと診断された後の患者が「何かしなければ」と焦る気持ちを持つ場合、運動に気持ちを向けることは、短期的なストレスコーピングの観点からも、長期的な健康増進の観点からも有益です。現行の保険制度化ではがん化学療法導入時に運動指導まで行う人的余裕はありませんが、運動は「始めたいと思った時が最も良い始め時」であり、医療者側から見れば、Face to Faceのコミュニケーションによる運動の推奨は、患者の運動モチベーションの向上につながります。

参考として身体活動におけるエネルギー消費量の表を載せておきます

活動の種類 実施方法 メッツ
安静 横になって静かにTVを見る 1.0
立位で列に並ぶ 1.3
歩行 平地普通歩行 3.0
早歩き(6.4Km/時) 5.0
走行 ジョギング 7.0
ランニング 8.0
水泳 平泳ぎ 5.3
自転車 16.1Km/時未満 4.0
16.1~19.2Km/時 6.8
筋力トレーニン きつい労力 8.0
ほどほどの労力 3.8
階段の上り下り ほどほどの労力 3.8
なわとび 12.3
掃除 掃き掃除・掃除機 3.3
床拭き 4.5
窓ふき 3.2
子供の世話 走り回って遊ぶ 5.8
抱きかかえて移動する 3.0
大工仕事 ほどほどの労力 4.5
きつい労力 6.0
釣り 全般 3.5

(*1)Buffart LM,et al.Cancer Treat Rev 2014;40:327-340〔PMID:23871124〕
(*2)がんのリハビリテーションガイドライン、金原出版2013


華井明子 国立がん研究センター支持療法開発部門/社会と健康研究センター Cancer Board Square vol.4 no.2 2018 より抜粋しました

以上です  ぴのこ拝

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抗がん剤副作用対策 口内炎

 がん治療が開始され抗がん剤の投与や放射線治療が進む中で、口腔内トラブルが発生することがあります。
口内炎をはじめとした粘膜障害は食事摂取量の減少といった小さな影響から便秘や悪心、その他多くの苦痛症状へ波及します。

*** 発生機序

1.口腔粘膜炎
 細胞障害性抗がん剤によるフリーラジカル(過剰な活性酸素)の産生とそれに伴うサイトカインカスケード(細胞シグナルにおいて重要な小さい蛋白が次々に産生されること)による粘膜の直接障害による症状として発現します。分子標的薬による口内炎の機序は、まだ十分に解明されていません。

2.口腔感染症
 細胞障害性抗がん剤投与による白血球減少に伴う、二次的な症状として発現します。

*** 評価

 症状評価は、主としてCTCAE(がん領域の有害事象評価)のGrade分類(1~4)に準じて行われます。

口腔粘膜炎のグレード分類

Grade 1 Grade 2
診察所見 症状がない、または軽度の症状がある 中等度の疼痛
機能/症状 治療を要さない 経口摂取に支障がない、食事の変更を要する
その他の症状 ピリピリ、チクチクした感じ、喉の違和感 潰瘍部分のジーンとする痛み固形物嚥下時の軽度の痛み
Grade 3 Grade 4
診察所見 高度の疼痛 生命を脅かす
機能/症状 経口摂取に支障がある 緊急処置を要する
その他の症状 潰瘍部の刺すような強い痛み、唾液も呑み込めないほどの嚥下時の痛み 鎮痛剤の効果がない強い痛み、全身的な発熱で敗血症の危険性
*** 対策
<予防的ケア>

 口内炎の発症を完全に抑えるのは難しいですが、口腔内を清潔に保つことは、口内炎の二次感染の予防や重症化を避けることに役立ちます。
 
 ・保清歯磨きによる物理的清掃と含嗽による科学的清掃を実施)保湿(頻回の含嗽、保湿薬や市販の口腔内保湿ジェルを併用)禁煙 を行います。

 ・治療開始後はアズレンスルホン酸含嗽液などを使用し、含嗽はこまめに行います。口腔内に行き渡らせるようブクブクうがいを行います。
 
 ・ヨード含有(細胞障害性がある)及びアルコール含有(粘膜乾燥につながる)の製剤は使用しないようにします。

<Grade 1>

含嗽
 ・含嗽の継続:アズレンスルホン酸含嗽液を用いる。
 ・口腔粘膜のターンオーバーのサイクル「2時間程度」を目安に、1日6~8回確実に行う。

<Grade 2>

含嗽+鎮痛薬(+医療用麻薬)
 ・含嗽の継続:アズレンスルホン酸含嗽液を用いる。
 ・食前に鎮痛薬(アセトアミノフェンカロナール®)400~500mg/回若しくはNSAIDs)を使用する。
 ・食前に短時間作用型の医療用麻薬(例:塩酸モルヒネ水溶液5mg/回)を追加する(内服もしくは含嗽(適応外))
 ・メソトレキセート若しくはシスプラチンを用いる場合は、NSAIDsの使用は避ける。

<Grade 3・Grade 4>

含嗽+鎮痛薬+医療用麻薬
 ・含嗽の継続:アズレンスルホン酸4%リドカイン含嗽液を用いる。
 ・アセトアミノフェンもしくはNSAIDsの定時内服
 ・麻薬の効果が短時間作用型で不十分であれば長時間作用型の内服、持続注入も考慮する。

<Grade 1 Grade2 Grade3・4の使用可能な治療として>

 ・ポラプレジンク(プロマック®)+アルギン酸ナトリウム液(アルロイドG®)(適応外)
 ・アロプリノール含嗽液(適応外)
 ・半夏瀉心湯(塗布、内服)(1回2.5g、1日3回)を水50mlに溶解し、口腔内を含嗽
 ・レバミピドムコスタ®)含嗽液(適応外)
 ・デキサメサゾン口腔用軟膏(ケナログ®)びらんまたは潰瘍を伴う難治性口内炎、舌炎に(カンジダ症がないか確認する)
 ・エピシル®は、塗布することにより、薄い膜を形成し物理的刺激を避け疼痛緩和をはかるもので、約8時間効果が持続します。


 症状の改善が見られない場合は、歯科へのコンサルテーションがなされますが、重篤化した症状へのエビデンスは低く、やはり予防的なケアが重要となります。


 食事を工夫して痛みを和らげるのも大切です。薄味にし、室温程度に冷ましたもの、ミキサー食、軽食、とろみのある食事、流動食をとる、酸味(果物など)や香辛料は控えるようにします
 
以上です。

鷹野 理 「見えない部位の副作用-口内炎」 CancerBoard Square vol.3 no.1 2017
がん薬物療法副作用管理マニュアル 「口内炎(口腔粘膜炎)」より抜粋しました

ぴのこ拝

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抗がん剤副作用対策 発疹

 EGFR阻害剤では、ざ瘡(にきび)様症状が、皮脂腺の多い頭皮、顔面、前胸部、背中に早期に発現します。EGFR投与開始後1週以降でざ瘡様皮疹が、約3~5週で皮膚乾燥を伴い、手の指先にひび割れを生じ、約8週で爪周囲炎が遅発的に現れるようになります。爪周囲炎は重症化すると大変つらく、日常生活への支障を伴います。

 

対策

・普段からの皮膚ケアとして、弱酸性の石鹸を使用し、微温湯で清潔にします。無香料の保湿クリームやローションを使用して保湿します。外出時は30分前には、SPF(Sun Protection Facter) 25以上の日焼け止めを塗布します。日焼け予防として長袖の衣服を着用し皮膚を保護します。

 

・体温が上昇する生活(サウナ、温浴、激しい運動)を控えます。

 

・重症化予防対策として、1%のヒドロコルチゾンを含む保湿液と日焼け止めを1日2回、治療開始から6週間塗布し、ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)1回100mg、1日2回、またはミノサイクリン 1回100mg1日1回を治療開始から8週間服用します。

 

・発疹が改善しない場合、副腎皮質ステロイド外用薬の強さの変更を検討します。

 

・急速に発現する発疹に発熱が伴っている場合は、重篤な皮膚障害の可能性があるのですぐに医療機関を受診しましょう。

 

 

 普段医療機関で使われているざ瘡(にきび)様皮疹の重症度評価を載せておきます。

 

ざ瘡(にきび)様皮疹の重症度評価

 Grade 1 

 体表面積の<10%を占める紅色丘疹*および/または膿疱*で、搔痒感や圧痛の有無は問わない

Grade 2   

体表面積の10~30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、搔痒感や圧痛の有無は問わない

社会心理学的な影響を伴う

・身の回り以外日常生活動作の制限 

Grade 3   

体表面積の>30%を占める紅色丘疹 および/または膿疱で、搔痒感や圧痛の有無は問わない

・身の回りの日常生活動作の制限

経口抗菌薬を要する局所の重複感染 

Grade 4

・紅色丘疹および/または膿疱が体表のどの程度の面積を占めるかによらず、搔痒や圧痛の有無は問わないが、 静注抗菌薬を要する広範囲の局所の二次感染を伴う

・生命を脅かす

脚注 *丘疹(直径10mm以下の局限性隆起性変化)  

*膿疱(水泡の内容が膿性のものをいい、白色から黄色)

  

以上です。

がん薬物療法副作用管理マニュアルから抜粋しました。   ぴのこ拝

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抗がん剤副作用対策 味覚障害

 抗がん剤味覚障害は、他の副作用と比較すると発現時間も明らかではなく、十分な対処法も確立されていません。また、生命予後に直接関係するものではない為、医療者からは軽視されがちな副作用の一つです。

 

 味覚異常は食欲不振を引き起こすだけでなく、患者のQOLに大きな影響を及ぼします。さらには食欲不振からくる栄養障害が化学療法の継続に影響を与える可能性も考えられ、軽視することのできない副作用と言えます。

 

 抗がん剤による味覚障害のメカニズム

①味細胞や神経の障害 

 味蕾細胞や味覚を伝える神経が障害を受けることで、味覚に異常が生じると言われています。タキサン系薬剤(パクリタキセル<タキソール®>、ドセタキセル<タキソテール®>)では、神経の障害によって味覚障害が発生することが過去に報告されています。

亜鉛の欠乏

 亜鉛の欠乏も味覚障害の原因の一つとされていて、フルオロウラシル<5-FU®>のように亜鉛とキレート(化学結合物)を形成しやすい薬剤も報告されています。

③唾液分泌の低下

 唾液には、味の成分を味蕾に運搬する働きがあり抗がん剤の副作用により、唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥すると味が分かりにくくなると言われています。

 

 味覚障害を起こしやすいレジメンは、5-FU系タキサン系プラチナ系(シスプラチン)ビンアルカロイド(ビンクリスチン<オンコビン®>、ビンブラスチン<エクザール®>などがあげられます。

 

 味覚の変化には「味を感じなくなる」「砂をかんでいるような感じ」などの鈍感化と、「味を強く感じる」などの敏感化があり、抗がん剤による味覚障害にはその両方が出現しています。

 

味覚障害への対処法

亜鉛補充法

 補充する薬剤としてはポラプレジンク<プロマック®>があり、亜鉛含有量の多い食品(牡蠣、豚レバー、牛赤身、ホタテ貝等)を摂取します。

 

②口腔乾燥の積極的予防

 口当たりの良い食品や、水分の多いもの(果物、シャーベットなど)を食べるようにし、冷ましたお茶や水をこまめに補給します。口内の乾燥を和らげる市販の保湿剤などもあります。

 

③食事の工夫

 食事内容での対応も重要な手段の一つです。塩味やスパイスの付加の有用性も報告されています。また味覚の過敏や、金属のような味、砂を噛んだような味といった違和感を感じる場合は、水分含有量が多い、のど越しがよいといった口腔内停滞時間を軽減した食事が好まれ、反対にしょうゆ味の料理は好まれにくい傾向にあるといった報告もあります。

 

【おいしい料理】・水分の多い料理・喉越しの良い食品が多い傾向

主食:麺・冷たい麺、冷やそうめん・うどん カップラーメン 冷茶漬・おじや

主菜:卵豆腐、かまぼこ、鶏の照り焼き

副菜:トマトサラダ、和え物、酢の物、吸い物、ポタージュ

菓子・果物・他:シャーベット、ゼリー、フルーツ、ふりかけ

 

【おいしくない料理】・しょうゆ味が多い・水分量の少ない料理が多い傾向

主食:白ごはん、おじや

主菜:肉野菜炒め(しょうゆ味)、肉・魚・卵料理

副菜:そばのつゆ(しょうゆ味)、ひじき煮(砂をかんだよう)、カレー(味がしない)、しょうゆ味が強いもの、煮物(しょうゆ味)、和え物(しょうゆ味)、酢の物

菓子・果物・他:フルーツ缶、リンゴジュース、水、ごまだれ

(河内啓子、第12回日本臨床腫瘍学会学術集会2014 より)

Cancer Board Square vol.3 no.1 2017 より抜粋しました ぴのこ拝

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