原因による痛みの分類
痛みの種類 | 原因 | 例 |
---|---|---|
侵害受容性痛 | 侵害受容器の活性化 | 打撲、やけど、手術操作による痛み、術後痛 |
神経障害性痛 | 神経系の機能異常 | ヘルニア、視床痛 |
心因性痛 | 心理的な異常に由来 | 身体表現性障害 |
☆侵害受容性痛・・痛みの伝達系が正しく作動している。発生を抑制(NSAIDs)伝導を抑制(神経ブロック)伝達を抑制(オピオイド)
神経障害性疼痛の特徴
☆痛みの伝達系が正しく作動していない。(例:腕神経叢引き抜き損傷、ヘルニア、脊柱管狭窄症、脳出血後痛、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、糖尿病性神経障害、脊髄損傷後痛)
☆普段、経験しない痛み・歪んだ痛み(例:電気が走るような痛み、熱を持った痛み、しびれ痛み、ちょっとした刺激でも痛みが強い)
☆神経障害性疼痛に伴う症状(不眠、無気力、眠気、集中力低下、うつ症状、不安、食欲不振)
☆がんの痛みと神経障害性痛・・脊髄圧迫、がんの神経叢転移、化学療法誘起末梢神経障害による痛み、骨転移痛(骨転移痛患者の17%で神経障害性疼痛の痛みを訴える。痛みがより強)がん神経障害性痛では進行性に痛みが増強する。
神経障害性疼痛の治療
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(非がん)
第一選択薬 アミトリプチリン(抗うつ薬)デュロキセチン(抗うつ薬)プレガバリン(抗けいれん薬)
第二選択薬 ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液、トラマドール
第三選択薬 モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン
(非がんの神経障害性疼痛では、慢性化を踏まえてオピオイドは効果はあるが第三選択薬となっている。)
プレガバリン・血漿タンパクと結合しない・肝臓で代謝を受けない・チトクロムP450分子を阻害しない・99%が未変化体のまま尿中に排泄される
①作用機序:カルシウムチャネルα2-δ ②容量:75mg/日を1日1-2分服、もしくは150mg/日を1日3回分服➡3-7日後に1日300mgまで増量、忍容性が認められる場合には3-7日おきに150mg/日ずつ増量➡最大投与量:600mg(繊維性筋痛症450mg)③治療効果判定:4週間 ④副作用:眠気、めまい、複視、体重増加 ⑤投与上の注意:腎機能障害患者(問題となる薬物相互作用は少ない)
プレガバリンの腎機能障害患者での投与
CCr | 60>CCr>30 | 30>CCr>15 | 15>CCr | HD(2日1回) |
---|---|---|---|---|
初期量(1日) | 75mg分1・3 | 50mg分1・2 | 25mg分1 | 25mg |
最大投与量(1日) | 300mg分2・3 | 150mg分1・2 | 75mg分1 | 75mg |
プレガバリンの神経障害性がん疼痛に対する効果
Gabapentin for Neuropathic Cancer Pain:A Randomized Controlled Trial the Gabapentin Cancer Pain Study Group J Cllin Oncol 2004;22:2909-17
Global Pain | Shooting Pain | Burning Pain | Dysesthesial Pain | Lancinating Pain | |
---|---|---|---|---|---|
Gabapentin | 7.0→4.60 | 6.0→3.76 | 3.3→2.17 | 6.4→4.28 | 6.0→4.91 |
Placebo | 7.7→5.45 | 6.1→4.31 | 3.9→2.32 | 6.0→5.24 | 11.5→4.92 |
Gabapentinはすでにオピオイドを投与されている神経障害性がん疼痛の緩和に有効である
プレガバリンの化学療法誘起末梢神経障害性疼痛に対する効果
→有効性は認められていない➡効果のある方もいる、トライ&エラーで使っていくのも一つの方法
☆下行性疼痛抑制系に作用する鎮痛薬・・オピオイド、抗うつ薬(TCA・SNRI)
三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)
①作用機序:複数の作用機序 ②容量10mg就寝前1回投与➡3-7日おきに1日25㎎ずつ増量➡最大投与量150mg3× ③治療効果判定:6-8週間、最大投与量で2週間以上 ④副作用:眠気、めまい、排尿障害、口渇 ⑤投与上の注意:閉塞性緑内障、心筋梗塞回復期
SNRI(デュロキセチン)
①作用機序:セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害 ②容量20mg/日を1日1回朝食後内服➡1週間以上の間隔をあけて、1日20mgずつ増量➡最大投与量;60mg ③治療効果判定;4週間 ③副作用:眠気、悪心、めまい、便秘など ⑤適応;慢性腰痛症、糖尿病性神経障害及び繊維性筋痛症に伴う疼痛
抗うつ薬はがんには保険適応しにくい。がん性神経傷害性疼痛にはオピオイドが一番効果がある。
Q&A
Q1がん患者の神経障害性疼痛に対してオピオイドが有効とのことだが、オピオイドの中で効果に差があるか?
A1現在のところオピオイドの鎮痛効果の違いに関する高いエビデンスはないが、オピオイドスイッチングによって鎮痛効果が改善する可能性はある。
以上です。
今回はがん患者・非がんの神経障害性疼痛に関するセミナーを取り上げました。骨転移痛患者の17%が神経障害性疼痛の痛みを訴え、痛みが強度なこと、がんではオピオイドが第一選択になります。非がんでは高齢化に伴い、脊柱管狭窄症、脳出血後痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害などの神経障害性疼痛が見られ、リリカやサインバルタが第一選択薬となっています。老化による神経障害性疼痛は今後ますます問題となり、処方も増えていくことでしょう。リリカの腎機能による調整、サインバルタの副作用等に留意して適正使用に努めたいと思います。
ぴのこ拝