肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

抗がん剤副作用対策 味覚障害

 抗がん剤味覚障害は、他の副作用と比較すると発現時間も明らかではなく、十分な対処法も確立されていません。また、生命予後に直接関係するものではない為、医療者からは軽視されがちな副作用の一つです。

 

 味覚異常は食欲不振を引き起こすだけでなく、患者のQOLに大きな影響を及ぼします。さらには食欲不振からくる栄養障害が化学療法の継続に影響を与える可能性も考えられ、軽視することのできない副作用と言えます。

 

 抗がん剤による味覚障害のメカニズム

①味細胞や神経の障害 

 味蕾細胞や味覚を伝える神経が障害を受けることで、味覚に異常が生じると言われています。タキサン系薬剤(パクリタキセル<タキソール®>、ドセタキセル<タキソテール®>)では、神経の障害によって味覚障害が発生することが過去に報告されています。

亜鉛の欠乏

 亜鉛の欠乏も味覚障害の原因の一つとされていて、フルオロウラシル<5-FU®>のように亜鉛とキレート(化学結合物)を形成しやすい薬剤も報告されています。

③唾液分泌の低下

 唾液には、味の成分を味蕾に運搬する働きがあり抗がん剤の副作用により、唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥すると味が分かりにくくなると言われています。

 

 味覚障害を起こしやすいレジメンは、5-FU系タキサン系プラチナ系(シスプラチン)ビンアルカロイド(ビンクリスチン<オンコビン®>、ビンブラスチン<エクザール®>などがあげられます。

 

 味覚の変化には「味を感じなくなる」「砂をかんでいるような感じ」などの鈍感化と、「味を強く感じる」などの敏感化があり、抗がん剤による味覚障害にはその両方が出現しています。

 

味覚障害への対処法

亜鉛補充法

 補充する薬剤としてはポラプレジンク<プロマック®>があり、亜鉛含有量の多い食品(牡蠣、豚レバー、牛赤身、ホタテ貝等)を摂取します。

 

②口腔乾燥の積極的予防

 口当たりの良い食品や、水分の多いもの(果物、シャーベットなど)を食べるようにし、冷ましたお茶や水をこまめに補給します。口内の乾燥を和らげる市販の保湿剤などもあります。

 

③食事の工夫

 食事内容での対応も重要な手段の一つです。塩味やスパイスの付加の有用性も報告されています。また味覚の過敏や、金属のような味、砂を噛んだような味といった違和感を感じる場合は、水分含有量が多い、のど越しがよいといった口腔内停滞時間を軽減した食事が好まれ、反対にしょうゆ味の料理は好まれにくい傾向にあるといった報告もあります。

 

【おいしい料理】・水分の多い料理・喉越しの良い食品が多い傾向

主食:麺・冷たい麺、冷やそうめん・うどん カップラーメン 冷茶漬・おじや

主菜:卵豆腐、かまぼこ、鶏の照り焼き

副菜:トマトサラダ、和え物、酢の物、吸い物、ポタージュ

菓子・果物・他:シャーベット、ゼリー、フルーツ、ふりかけ

 

【おいしくない料理】・しょうゆ味が多い・水分量の少ない料理が多い傾向

主食:白ごはん、おじや

主菜:肉野菜炒め(しょうゆ味)、肉・魚・卵料理

副菜:そばのつゆ(しょうゆ味)、ひじき煮(砂をかんだよう)、カレー(味がしない)、しょうゆ味が強いもの、煮物(しょうゆ味)、和え物(しょうゆ味)、酢の物

菓子・果物・他:フルーツ缶、リンゴジュース、水、ごまだれ

(河内啓子、第12回日本臨床腫瘍学会学術集会2014 より)

Cancer Board Square vol.3 no.1 2017 より抜粋しました ぴのこ拝

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