疲労・倦怠感はがん患者が訴えるもっとも高頻度の症状の一つであり、複数の要因によって引き起こされることや病態が刻々と変化することも多いため、常にモニタリングや評価を行い、病態を検討して対処する必要があります。確立された対処法はないため個人の状態に合わせて個別に対応することが必要となります。
定義
疲労・倦怠感は一般的に「エネルギー不足が原因となって苦痛や種々の機能低下が引き起こされる状態」のことである。特にがんに伴う倦怠感は「最近の活動に合致しない、日常生活機能の妨げとなるほどの、がんまたはがん治療に関連した、つらく持続する主観的な感覚で、身体的、感情的かつ/または認知的倦怠感または消耗感」と定義される。(NCCN:全米総合がんセンターネットワークガイドラインより)
症状は次のように大別されます。
身体的倦怠感 | だるい、疲れやすい、(体が)重い |
精神的倦怠感 | やる気が出ない、興味が持てない |
認知的倦怠感 | 忘れっぽい、注意力が散漫、言い間違いが増えた |
抗がん薬投与による疲労・倦怠感は、薬剤そのものによる有害事象である場合だけでなく、悪心・嘔吐や食欲不振による脱水、栄養障害、貧血、電解質異常、甲状腺・下垂体機能異常、感染などさまざまな事象によって引き起こされる場合も多いです。
疲労の重症度評価
Grade 1 | 休息により軽快する疲労 |
Grade 2 | 休息によって軽快しない疲労:身の回り以外の日常生活動作の制限 |
Grade 3 | 休息によって軽快しない疲労:身の回りの日常生活動作の制限 |
Grade 4 | (定義なし) |
倦怠感の重症度評価
Grade 1 | だるさ、または元気がない |
Grade 2 | だるさ、または元気がない:身の回り以外の日常生活動作の制限 |
Grade 3 | (定義なし) |
Grade 4 | (定義なし) |
対策
□エネルギー管理:体力をコントロールして消耗を避ける
・優先順位を設定してスケジュール調整をする、委任(今まで自分でしてきたことの一部を他人に任せる)、昼寝の制限(1時間以内)、並行作業を避ける(一度に複数のことをせず、ひとつひとつ片づける)
・倦怠感の少ない時間帯に、優先度が高くエネルギーが必要なことを行う、使用頻度の高いものは手の届く範囲におく、合間に休憩をとる。
□気分転換
・ゲーム、音楽、読書をする。できる限り社会生活を維持して、家族・友人との交流を保つ。
□運動
・疲労・倦怠感やQOLを改善する場合がある。楽しんで行うことのできる運動を選ぶ。短時間で軽めの運動から始め、徐々に時間と強度を上げる。可能であれば、ウォーキングやジョギング、水泳などの持久運動と抵抗運動を織り交ぜる。理学療法、作業療法、ヨガ、太極拳、気功など
□マッサージ
□認知行動療法を受ける
□栄養療法指導を受ける
□副腎皮質ステロイド薬
・ベタメタゾン0.5mg/日で開始し、0.5mgずつ増量
・デキサメメタゾン4㎎/日で2週間投与
□漢方薬
・補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯
疲労・倦怠感はさまざまな疾患に共通の症状であり、既往歴や治療中の合併症にも注意が必要です。大変つらい症状ですが、個人差があり、セルフケアが大事になると思います。
以上です。