肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

抗がん剤副作用対策 下痢

下痢を引き起こしやすい薬剤 
 下痢は電解質異常脱水、腸粘膜の破たんによる細菌侵入など、生命にかかわる可能性のある症状です。特に、下痢につながる有名な薬剤はイリノテカン(カンプト®)で投与前に副作用を予知する遺伝子変異の診断が保険適応になったことも知られています。イリノテカン(カンプト®)は遅発性の下痢を引き起こすこともあり、下痢も便秘も生じないようにコントロールすることが必要です。

 分子標的薬であるアファチニブ(ジオトリフ®)は連日の経口摂取が必要な薬剤であり、下痢の発生頻度が非常に高いことで知られています。速やかな止瀉薬(下痢止め)の内服で重篤化を防ぎ、抗がん薬の投与を継続できるようにすることが重要です。


発症時期と支持療法
 下痢の発症タイミングとしては、原因となる抗がん薬の投与中から数時間以内に起きる早発性の下痢と、投与後24時間以降に生じる遅発性の下痢があります。好中球減少の時期と重なると、重篤全身の感染症へ移行するため、特に注意が必要となります。

 高齢者や進行したがん患者では、脱水症状(皮膚の緊張低下・乾燥、口渇、強い倦怠感、脱力感)や電解質異常を引き起こすため、外来通院中の場合は受診の目安を知っておく必要があります。
下痢が生じた際には、尿量の低下口腔内の乾燥体重減少などに注意して、水分、スポーツドリンク、刺激や脂質の少ない食事などを摂取し、重篤な場合は腸管の安静を保つために絶食にし、輸液を行います。休息をとり、心身の安静を保ちます。

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下痢の臨床的な重症度
発症のタイミングと持続時間
下痢の回数と量、性状
随伴症状の有無と程度
で総合的に考えます。

 
軽度
 便の性状の変化を確認する(参考:ブリストル便形状スケール)・・いつもより水っぽい。ご飯を食べた後下痢になる。便やおしっこを漏らしてしまうことがある。

対応
⇒症状改善のための支持療法を検討・・ロペラミド(ロペミン®)の内服を検討、イリノテカン(カンプト®)投与中の早発性下痢にはアトロピン静脈注射を検討。遅発性下痢の予防として、炭酸ナトリウム半夏瀉心湯を内服。便秘も回避する。
⇒食事指導・・・乳糖を含む食品や刺激物、脂質の多い食品を避ける。
症状の経時記録をする
⇒トイレに行きやすい環境の調整

中等度
 腹痛や便失禁がある、水様便が出る。便意がない時にも腹痛や吐き気がする

対応
ロペラミド(ロペミン®)の内服に加えて、内服抗がん薬に関しては、休薬、減量を検討する。感染性腸炎と鑑別し、抗菌薬の内服を検討する。
⇒皮膚のバリアを守り感染を予防する・・・肛門周囲は低温・低圧で温水洗浄し、石鹸などで洗いすぎない。
止瀉薬(下痢止め)の内服時間や回数、下痢の経時記録を残す

重度
 水様便が1日に何度も生じ、24時間以上継続する。発熱・吐き気・尿量減少がある。下痢止めが効かない。

対応
入院加療。必要時、輸液療法と抗菌薬の投与を検討。原因となる抗がん薬は中止、再開時は減量を検討。
⇒消化管の安静を保ち、点滴で水分と電解質を補う。
⇒できるだけ体力を温存する。休息をとり、心身の安静を保つ。

下痢の重症度評価

Grade 1 ベースラインと比べて<4回/日の排便数増加
Grade 2 ベースラインと比べて4~6回/日の排便数増加
Grade 3 ベースラインと比べて7回以上/日の排便数増加;便失禁;入院を要する
Grade 4 生命を脅かす;緊急処置を要する


参考:ブリストル便形状スケール
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以上です
YORi-SOUがんナーシング 2018 vol.8 no.4  メディカ出版 より抜粋しました
ぴのこ拝

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