肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

がん治療と緩和ケアのQ&A~治療者の立場から~

 今回は治療者の立場から、がん治療と緩和ケアのQ&AとしてCancer Board Square Vol.5 no.1 2019から記事を抜粋したいと思います。
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代替療法

 Answer:大場 大先生(東京オンコロジーセンター)
    :鈴木 梢先生(がん・感染症センター都立駒込病院

** Q:化学療法中や終了後に、エビデンスのない補完代替療法を患者が希望されたとき、どのように答えるべきでしょうか 

A:腫瘍内科医の立場から:大場先生
・「エビデンスがない」と断じてしまうのではなく、それら療法が心配や不安に対するある種のよりどころになっていることに一定の理解を示す
・インチキ免疫療法のような高額自由診療や、家族と過ごす大切な時間の足かせとなるエセ医学に対しては生存利益がないことをしっかり説明する
・患者のQOL維持を常に意識しながら、より優しい対話を心掛ける。
A:緩和ケアの立場から:鈴木先生
・多くの患者さんが補完代替療法をがんの治療ではなく、希望を維持するために用いている。
・いきなりの否定ではなく、まずその内容と目的をじっくり聞いてみる。
・有効性は期待できなくても、相互作用を含めたリスクが低く、患者・家族の希望になっている場合は中立的に見守る場合もある。
・不利益や負担が大きい場合、医療者としての気がかりを伝える必要があり、食事の工夫や家族のマッサージなど、他にできることを提示し、希望の維持を配慮する。

余命・予後

Answer:西 智弘先生(井田病院)
    鈴木 梢先生(がん・感染症センター都立駒込病院

** Q:あとどれくらい生きられるのでしょうか、と聞かれたらどう答えればいいのでしょうか

A:腫瘍内科医の立場から:西先生
・断定的な言い方であと何か月など、即答しないことが大事。
なぜそれを聞きたいと思われたかアセスメントをする。
・予測をすることは不可能であることを正直にお話しし、基本的には今の治療を続けながら、不安に思っていることを今後も話し合っていくことを伝える
A:緩和ケアの立場から:鈴木先生
・患者さんは実際に答えを求めていないことも多い。
・不確かな予測を安易に伝えず、その問いの根底にある思いに耳を傾ける。
・本人の感覚を肯定する形で伝え、不安を煽ったり、不用意に傷つけないように十分な配慮が必要。

積極的治療の中止

Answer:吉田健史先生(近畿大学病院)
    廣橋 猛先生(永寿総合病院)

** Q:抗がん剤の中止やホスピスへの転院/在宅緩和ケアの移行をどのように伝えたらよいでしょうか

A:腫瘍内科医の立場から:吉田先生
・「もうこの病院であなたにできる治療はない」などの表現は避け「今後は抗がん剤の継続があなたにとって負担になるので、”苦痛緩和の治療”を最大限に行うほうが望ましい」ことを強調する。
・「突然の残念ながら緩和ケア」を避け、主治医が患者のために熟考した「現時点での最善の選択肢」として抗がん剤の中止と緩和ケアへの移行を勧める、(Hope for the best, but prepare for the worst)
・患者や家族のニーズに合ったホスピス/在宅のメリットを説明することが大切。
A:緩和ケアの立場から:廣橋先生
:積極的治療を続けることが難しい場合も、もう「治療」することはできないという伝え方ではなく、緩和ケアも「治療」の一つであることを強調してほしい。
・緩和ケアで少しでも苦痛を和らげ体力を維持し、充実した時間を長く保てるといった、患者が希望をもてる伝え方が望ましい。
・伝えるタイミングも抗がん剤を中止してからではなく、(「治療中止」と「転院/移行」という2つのbad newsが患者を襲う)少し前のタイミングで、患者がどうしたいかを考える余裕が生じるように伝える。

以上です。

Cancer Board Square Issue April Vol.5 No.1 2019 Part 4 がん治療と緩和ケアのQ&Aより抜粋しました。
ぴのこ拝
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