肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド(3)

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今回は、がんの痛みに対する治療のしくみと痛み止めについて「がんの痛み治療ガイド増補版」日本緩和医療学会編から抜粋し、Q&A形式で紹介したいと思います。

* Q1 がんになり抗がん剤治療を受けていますが、痛みが出てきています。痛みの治療には、標準的なものがあるのでしょうか?

A1 もっとも標準的ながんの痛みの治療法は、多くのがん患者さんが痛みから解放されることを目標として世界保健機構(WHO)が1986年に発表し、1996年に改定された「WHO方式がん疼痛治療法」です。これは現在も世界中で利用されています。

Q2 上手に痛み止めを利用するコツなどはありますか?

A2 痛み止めの使用時に大切な5原則があります。

のみ薬を用いる
②薬をのむ時間を決めて規則正しく使用する
③痛みの強さによって薬の強さを選ぶ
④あなたにあった量の薬をのむ
⑤➀~④を行った上で、薬の説明や副作用対策など細かい配慮を行う


③薬の強さについては
WHOの「三段階除痛ラダー」を参考に選びます
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塩野義製薬~がんの痛み治療法について~より

Q3 がんの痛みに対する治療は、どのような目標に向かって進められるのでしょうか?具体的にイメージできるように教えてください。

A3 がんの痛み治療には3つの段階的目標があります。

①痛みなく眠れること
②安静時に痛くないこと
③動いても痛くないこと

痛み止めの薬だけでなく、放射線治療や神経ブロック療法などの専門的な治療をおこなうこともあります。すべてのがん患者さんには、より自由で快適な生活を送るために痛み治療を受ける権利があるのです。

Q4弱い痛みに対して使われる薬にどのような種類があるのでしょうか?

A4 がんの痛みのうち第一段階の弱い痛みの治療には、非オピオイドで、解熱鎮痛薬と呼ばれる薬が使われます。

1)ステロイド性消炎鎮痛剤と2)アセトアミノフェンがあります

1)ステロイド性消炎鎮痛薬は、その名の通り、炎症(腫れなどにみられる症状)による痛みを鎮めるほか、熱を下げる作用もあり、たくさんの種類があります。しかし、胃潰瘍、腎機能低下、肝機能障害のような副作用を引き起こすことがありますから、痛みを伴う強い胸焼け、からだのだるさ、手足のむくみなどの症状がみられるときは、早めに医療者に相談しましょう。

2)アセトアミノフェンは腎機能低下や胃腸障害で非ステロイド性消炎鎮痛薬を使いにくい患者さんなどに使用されます。痛みを鎮めるほか、熱を下げる作用があります。まれに肝機能障害が起きる場合もありますから、強い体のだるさなどに注意が必要です。

分類 一般名 主な商品名
1) アンピロキシカム フルカム®
1) イブプロフェン ブルフェン®
1) インドメタシン インテバン®,インテバン坐剤®、インフリー®
1) エトドラク ハイペン®、オステラック®
1) ジクロフェナクナトリウム ボルタレン®、ボルタレンサポ®(坐剤)
1) スリンダク クリノリル®
1) セレコキシブ セレコックス®
1) ナプロキセン ナイキサン®
1) ピロキシカム バキソ®
1) フルルビプロフェン ロピオン静注®
1) メフェナム酸 ポンタール®
1) メロキシカム モービック®
1) ロキソプロフェンナトリウム ロキソニン®
1) ロルノキシカム ロルカム®
2) アセトアミノフェン セリオ静注液®、カロナール®、カロナール坐剤®、アルピニー坐剤®、アンヒバ坐剤®

Q5 がんの治療を受けています。弱い痛みがあるので解熱鎮痛剤を処方されています。最近、痛みが以前より強くなったので次の段階の痛みどめを使うことになりました。次の段階の薬というのはどんな薬なのでしょうか?

A5 がんの痛みに使う薬は、病気の進行や状態とは関係なく、痛みの強さによって3段階に分類されています。次の段階の薬というのは、第2段階に当たる「弱い痛みから中くらいの痛み」に対する薬で、コデイントラマドールがあります。

1)コデイン
痛みを抑える効果以外にも咳止めの働きがあります。市販の風邪薬の成分としても使われてきました。
2)トラマドール
痛みを抑えるだけでなく、しびれやピリピリした感じが抑えられることもあります。

一般名 主な商品名 製剤の特徴
コデイン コデインリン酸塩® 錠剤、散剤(粉薬)
ジヒドロコデイン ジヒドロコデインリン酸塩® 散剤(粉薬)
トラマドール トラマール® 錠剤、注射薬
ワントラム® 錠剤

3)コデイントラマドールの副作用
眠気、吐き気、便秘がありますが、眠気は適切な量を使用していれば、ほとんどの場合、数日でなくなります。吐き気も1週間くらいで治まりますが、強いときは吐き気止めを使います。便秘は下剤を使って調節します。解熱鎮痛薬と一緒に使うことで痛みの治療がさらに効果的になることが分かっています。
 痛みが比較的強い場合には、コデインやトラマドールの段階を飛ばして第3段階の強*オピオイド鎮痛薬を開始することもあります。

*オピオイド鎮痛薬モルヒネを代表とする、脳や脊髄(神経系のいわば司令塔の部分)に作用して痛みを抑える薬の総称です。日本では、モルヒネ、ヒドロモルフォンオキシコドンフェンタニル、タペンタドール、メサドン、コデイン、トラマドールが使われています。

以上です

次回は第3段階の強オピオイド(中くらいの痛みから強い痛みに使う薬)についてお伝えしたいと思います。

ぴのこ拝
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