臨床のためのがん遺伝子変異パネル検査のABC
〜『がんゲノム医療遺伝子パネル検査実践ガイド』(医学書院)より〜
今回は2019年6月1日に保険適用となったがん遺伝子パネル検査について『がんゲノム医療遺伝子パネル検査実践ガイド』(医学書院)より抜粋したいと思います。
A.がん遺伝子パネル検査でわかること
・解析対象遺伝子の「塩基置換・挿入/欠失異変」、「遺伝子増幅・欠失」、「遺伝子融合」などといった遺伝子異常がわかる。
・体細胞遺伝子異常(後天的なヒトが生きていく過程において引き起こされる異常)と生殖細胞系遺伝子変異(先天的な変異で体を構成する全ての細胞に見られる)が区別できる遺伝子パネル検査もある。
・コンパニオン診断(検査結果は対象の分子標的治療薬の適応となるバイオマーカーが陽性か陰性かの判定のみ)とがんゲノムプロファイリング(病的意義が不明なものも含めて、解析対象となる遺伝子・領域全ての遺伝子変異や遺伝子増幅などを検出する)のための遺伝子パネル検査がある。
B.がん遺伝子パネル検査の使い方
・コンパニオン診断薬は使えるがん種と対応する薬剤が決まっている
・がんゲノムプロファイリング検査は標準治療がない、もしくは終了した(見込みも含む)進行再発固形がん患者のうち全身状態良好の患者が対象となる。
・がんゲノムプロファイリング検査はエキスパートパネル(がん遺伝子パネル検査の結果を医学的に解釈するための多職種による検討会のこと)で解析結果に基づく治療方針を検討する必要がある。
・それぞれのがん遺伝子パネル検査にあったインフォームドコンセントが必要である。
・検査結果を家族と聞くことが推奨されており、同意文書には家族への結果開示希望の有無や、結果を伝えたい家族の連絡先の記入欄がある。(遺伝情報はセンシティブな面があるため)
・がんゲノム医療指定医療機関(中核/拠点/連携病院)以外の患者ががんゲノムプラファイリング検査を受ける場合、指定医療機関への紹介が必要である。
C.がんゲノムプロファイリング検査の保険適応(2020年1月)
2019年6月1日、NCCオンコパネルとF1CDx(がんゲノムプロファイリング)が保険適応となる。検査実施料が8000点、パネル検査判断・説明料が48000点で合計56000点となったが要件が細かく決められている。
・患者一人につき一回のみ
・患者にC−CAT(がんゲノム情報管理センター:がん遺伝子パネル検査により得られたゲノム情報を臨床情報とともに集約)登録について説明を行い、同意が得られた場合はC−CAT へデータを提出すること
・検査結果はエキスパートパネルで検討する。その際、C−CAT登録同意がある患者についてはその調査結果を用いること
・エキスパートパネルの検討結果を患者に文書を用いて説明すること
・検査実施に関する年月日を記載した管理簿などを作成して検査実施を管理すること
今回は主に『臨床としてのパネル検査について』の抜粋でしたが、次回は適切な治療の探し方について記載したいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。何かのお役に立てれば幸甚です。
ぴのこ拝