適切な治療の探し方
〜がんゲノム医療遺伝子パネル検査実践ガイド(医学書院)より〜
Point
(1)がんゲノムプロファイリング検査の結果、候補として提案される治療は『保険適応の薬』『未承認薬』『適応外薬』の3つ
(2)がんゲノムプロファイリング検査の結果に関連した治療が行われた患者は過去のデータからは1〜3割程度
(3)エキスパートパネルで、現在実施中の臨床試験の情報は得られるが、実施医療機関の詳細は問い合わせが必要となる
(4)患者申出療養制度のもと、適応外薬の臓器横断的な有効性を検討する研究が開始されている
今回は主に(1)(2)について抜粋したいと思います。
がんゲノムプロファイリング検査は、治療と関連し得る遺伝子異常を調べるために実施されていますが、この遺伝子異常を「アクショナブルな遺伝子異常」と呼びます。
米国のメモリアルスローンケタリングがんセンターで実施された1万人を超える患者データによると、
・保険適用の薬が推奨されるのが9%
・治験など未承認薬が推奨されるのが18%
・他のがんに承認されている適応外薬が推奨されるのが9%
という内訳です。臨床的な意義が不明な遺伝子が64%をしめていることになります。
国内で保険適応となっている2種類のがんゲノムファイリング検査について表にしました。
NCCオンコパネル
症例数 | アクショナブルな遺伝子異常が検出された症例数(率) | アクショナブルな遺伝子異常が治療方針に反映された症例数(率) | |
Tanabe Y,et al | 183 | 82(45%) | 14(8%) |
Sunami K,et al | 187 | 109(59%) | 25(13%) |
F1CDx
症例数 | アクショナブルな遺伝子異常が検出された症例数(率) | アクショナブルな遺伝子異常が治療方針に反映された症例数(率) | |
Hirshifield KM,et al | 92 | 87(95%) | 31(34%) |
Soal DP,et al | 223 | 109(49%) | 24(11%) |
NCCオンコパネルに関しては、Tanabeらの報告では21の遺伝子をアクショナブルな遺伝子異常と定義し、変異は45%に見つかり、第一相試験の分子標的薬の治験を実施した割合が8%でした。
次のSunamiらの報告では、遺伝子異常は59%で認められ、アクショナブルな遺伝子異常に合致する治療として13%(保険適用の医薬品3%、治験などの未承認薬8%、適応外薬2%)が実施されました。
F1CDxの先行研究では、アクショナブルな遺伝子異常は49〜95%で認められ、実際に治療に結びついた割合は11〜34%であったとされています。『アクショナブルな遺伝子異常』の定義が異なるため検出症例数にはばらつきが現れています。
(そろそろくたびれて参りました。)
がんゲノムプロファイリング検査後の治療は
①保険適用の薬
②未承認薬(治験中)|
③適応外薬(他のがん種に適応あり)
の3種類が想定されます。
次回は治療の内訳と障壁、治験の探し方、企業から薬剤が無償提供されている患者申出療養制度などについて、拙いながら抜粋したいと思います。
よろしくお願いいたします。
ぴのこ拝