肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

NHKマイあさラジオ 社会の視方・私の視点 終末期の在宅医療・緩和ケアを充実させるために

在宅での医療・ケアの在り方は

 日本在宅ホスピス協会会長 小笠原文雄先生 2018年4月12日

 

Q 「回復の見込みのない高齢者の患者等の終末期の治療方法を選ぶ手順」が11年ぶりに改訂されました。在宅医療も推進されていますが、近くに病院がない、ご近所に体制が整っていない場合はどうすればよいでしょうか?

A 大きな病院がなくて入院できない、地域のかかりつけ医が対応できない時は、教育的在宅連携緩和ケアを行っています。たとえばモルヒネの持続皮下注を出掛けに行って教えに行きます。お医者さんのいないところでは、遠隔診療で対応します。20~30km離れていてもTV電話(スマートフォン同志)があれば診療できます。4月から診療報酬にのるので、多くの医師も行ってくれるのではないでしょうか。

 

Q 在宅診療は家族の負担が重くなるのではありませんか?

A 本人の意志があれば家でとなりますが、家族が支えすぎて、奥さんの眉間にしわができて、倒れそうになれば、また入院となります。家族が疲れるのは、緩和ケアの失敗です。そうならないためにも 医療、介護、福祉、保健を大まかに知っている「トータルヘルスプランナー」が必要となってきます。介護保険を使えない方、障がい者自立支援の方、認知症の方等をサポートするには、介護のみを扱うケアマネージャーだけでは困難です。「トータルヘルスプランナー」の育成をすすめています。68歳の男性で脳出血・気管切開で、ケアは1日10~20回の痰の吸引だった方の場合、トータルヘルスプランナーが調整し、プロ以外の近所のお手伝いの方も加わり、2年後穏やかに旅立たれました。家族の方は入院では大変だったが、家では楽でしたと言っていただけました。SOSの前にケアするのが大切です。

 

Q 一人暮らしの方の対応はどうでしょうか?

A 小笠原内科では9割くらいが一人暮らしです。不思議なくらい、1人で亡くなられることが少ないです。それは遠隔診療とアプリがあるからです。たとえば岐阜の一人暮らしの男性と、東京におられる一人娘さんですが、アプリでお父さんの様子を見られて、そろそろ旅立ちそうだわね、とお別れに行かれます。ご本人は天井をみているだけで、ふすまをみているだけで、過去を想い出し、楽しく安心できる中で死ねる。痛みや不安、苦しみがあれば病院や施設に入られますが、同じ空気を吸って家で死ねる、ということは、笑顔になれるので嬉しい、とご本人が言われます。

 

Q 今後自宅での看取りが増えることが考えられます。人材の確保は大丈夫でしょうか?

A 高度医療は別ですが、病院で医師一人で5~10人診るとすれば、在宅医ではケアマネージャー、看護師、介護士等のチームの支えがあるので5~10倍の患者さんを診ることができます。国が後押しして、看護師が在宅へと誘導されつつあり、人材配分のシフトが変われば可能です。在宅医療は日本を救うと思っています。

 

Q おととし死者は1,337,000人でした。これから多死社会を迎えますが、死を考えたくない人が多い中で、死とどう向き合えばいいとお考えですか?

A 怖いと思うとだめです。死をみつめるから生が輝く、生き方を考えることにつながります。ご本人も笑顔で旅ただれる例をたくさんみてきて人生観、死生観が変わりました。終わりを臨むと書いて臨終です。がんでも、認知症でも、一人暮らしでも、お金がなくても、めでたいご臨終は願えば叶います。国民一人一人が望む場所で最後を迎えたいと文書で示せるようになるといいと思っています。

                             以上です。

 

これはフォローさせて頂いている いまいホームケア@在宅医療×コミュニティケアの今井先生の4月のツイートから引用させて頂きました。小笠原先生のメッセージに大変感銘を受けました。自分は娘の負担を考えて、終末期は緩和ケア病棟またはホスピスで最後をと思っていましたが、天井の模様を眺めてはここで笑って死ぬことができるのかなと考えるようになりました(家片づけないと)。同時に薬剤師として在宅医療に再び関わりたいと強く思いました。熱いメッセージをありがとうございました。

                                                                               ぴのこ拝

 

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緩和ケアチームの支援により難治性神経障害性疼痛にメサドンが有効であった1例

 山田正実(1)(2)(3)千丸裕美(2)、渡邊美貴(1)、松村千佳子(1)(2)(3)、鎌田実(1)、高橋一栄(2)

(1)大阪府済生会野江病院緩和ケアチーム(2)大阪府済生会野江病院薬剤科(3)京都薬科大学臨床薬学教育研究センター

                       (2017年10月22日受理)

日本緩和医療薬学会 雑誌【短報」より

 

A Case Report Regarding the Efficacy of Methadone for the Treatment of Severe Neuropathic Cancer Pain with Supportive Care by a Palliative Care Team

            

Abstract: We herein report a case in which refractory neuropathic cancer pain, which could not be relieved by high-dose intravenous morphine,improved after administering methadone.The pain relief was probably achieved due to the effect of methadone,besides an opioid receptor-mediated effect,an additional effect on N-methyl-D-aspartate receptor and Serotonin and Norepinephrine reuptake inhibitor.This case suggested that methadone may be a viable choice for the treatment of refractory and neuropathic pain.     

Key Word:methadone,neuropathicpain,opioid switching

 

僭越ながら抜粋させて頂きます。

 

緒言:メサドンはNMDA受容体拮抗作用、セロトニンノルアドレナリン再取り込み作用により、神経障害性疼痛にも有用であるとの報告がある。しかし、他の強オピオイド鎮痛薬からの切り替えにおいて、投与量は個々の患者で大幅に異なり、オピオイドスイッチングは慎重に行う必要がある(呼吸抑制、QT延長症候群の報告あり)臨床医だけでなく、薬剤師もメサドンの特性を理解する必要がある。

  モルヒネ持続注射から(プレバガリン継続併用)メサドンへの切り替えに緩和ケアチームが深くかかわり、患者の思いに寄り添いながら、肝がん骨転移による頸椎障害性疼痛の強い神経障害性疼痛の緩和を得ることができた。

治療効果、副作用の確認は 体性痛:NRS(Numerical Rating Scale) 副作用:STAS-J(Support Team Assessment Schedule 日本語版)で行った。

結語:骨転移による神経障害性疼痛は、今日オピオイド鎮痛薬を使用しても改善が難しい症状の一つである。本症例のように急激に進行した難治性の神経障害性疼痛に対してメサドンは、緩和ケアチームの関わりのもとに有効な治療法の一つとなりうると考えられた。

                                以上です

 

 これから、在宅医療に病院チームが参画してくることが予想されています。病院は内循環する組織なのかなと以前から思っている私ですが、日本の高度先進医療の担い手であることは疑いようもなく、保険薬局(一部大病院門前を除く)の知識ではついていけないことが多々あると思います。何かテーマを絞って深く狭く日々勉強していくしかないのかなあ、ジェネラルに広く浅くクスリの知識を持っているほうがいいのかなあと迷うわたくしですが、今は医療費節約という社会ニーズに合わせて学ぶしかないなあと思っています。

 

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進行がん患者と家族の食に対する苦悩への緩和ケアと栄養サポート

 

進行がん患者                                      

家族

がん悪液質

食に関する苦悩

栄養サポート  

            PalliatCare Res 2018.13(2:169-74

大阪市総合医療センター緩和医療科 天野先生、

聖隷三方原病院 緩和支持治療科森田先生 

日本緩和医療学会 後悔講座 原書より(1)

つたない要約でお許しください。 

 

 がん悪液質とは 

その病態は食欲不振と代謝障害の連動によって引き起こされる。進行度分類は3種類 pre-cachcxia,cachcxia(6か月以内に5%以上の体重減少or2%以上の体重減少),refractory cachexia(cachexia+代謝の異化有意・治療抵抗性・WHOPS3~4・予後予測3か月未満) がん悪液質の本態は全身性の慢性炎症(炎症性サイトカインとCRPが重要)である.

 

患者の食に関する苦悩へのがん悪液質の影響 

 患者の苦悩の原因は「がん悪液質についての理解不足(教えてくれない)」「体重増加を試みた失敗体験」「死の予兆としての認識」があげられる。患者のアンケート調査(n=1702)では、76%が緩和ケアスタッフにがん悪液質の栄養法についての専門的知識をもとめ、そのうちの過半数が食に関する苦悩の傾聴と食欲不振・体重減少についての医学的説明を望んだ。患者の満たされない思いは苦悩に繋がるのだろう

 

家族の食に関する苦悩へのがん悪液質の影響

がん悪液質は患者だけでなく彼らを支える家族へも影響を及ぼす。とくに患者の食欲不振が顕著になり体重減少が始まったとき家族の苦悩も増強する。家族の苦悩は「患者の世話における責任」から始まり「医療スタッフへの要望」が満たされず「患者との衝突」という形になって現れる。 

 

進行がん患者と家族の食に関する苦悩への緩和ケアと栄養サポート

傾聴・共感・支持を基本としたケアと適切な情報提供、栄養サポート(栄養カウンセリング・食事の工夫・栄養補助食品・点滴での栄養水分補給)は、がん悪液質にによる患者と家族の苦悩を軽減する。 がん悪液質は複合的症候群であるので栄養サポート・運動療法薬物療法の組み合わせた集学的治療が必要であるが refractory cachcxia にまで至れば治療の適応はもはやなく、患者・家族の苦悩は最大になるだろう。患者と家族の状況にあった緩和ケアと栄養サポートが求められる。しかし、この研究の知見はまだまだ十分ではなく今後のさらなる研究に期待する。          以上です

 

 

現場をほとんど知らない私が論文だけ拾って意見を述べるのは僭越ですが、食事は1日3回もあります。毎日毎回の苦悩は苦しい。苦悩を取り除くことが緩和医療・ケアの本質ではないかと思います。

 

また緩和医療薬学会にも学会誌のブログ掲載の許可を得ましたので薬剤師の視点からみた論文も記事にしたいと思います。

宜しくお願い致します

                              ぴのこ拝

 

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肺がんになった薬剤師(ぴのこ)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

はじめまして!薬剤師ぴのこです。

製薬会社研究所⇒主婦⇒病院(介護療養医療施設・老健併設)⇒保険薬局

20年以上薬剤師として働いてきました。お薬の箱を持つだけでワクワクする薬オタクです。保険薬局で毎日が勉強、フィールドワークの1種と思え楽しく働いてきましたが、平成29年7月肺せん癌の手術を行い、がんサバイバーとなりました。

自分自身や愛する家族のために、学びたいことが、緩和医療在宅医療終末期医療、ゲノム医療へとシフトしていきました。

 がんサバイバーにも100人いれば100通りのステージがあり、ストーリーがあります。

ある人には希望をもたらす情報がある人には絶望をもたらすかもしれない。情報発信には慎重でありたいと思っています。

でも所詮人間はBeing Mortal 「死すべき定め」です。終末期医療はがんだけには限りません。終末期医療は誰もが学ばなくてはならない課題だと思います。

また、緩和医療には、現在治療進行中の抗がん剤治療の副作用防止も含まれると思っています。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬にもたくさんの苦痛を伴う副作用があります。

 幸いにも私が所属している日本緩和医療学会の事務局に公開論文の引用の許諾を得ることができました。未熟な私ですが、少しずつ公開論文やその他学習したことを発信していきたいと思います。

 知識不足で間違った発信をすることもあるでしょう。ビシビシ指摘していただけたら大変うれしいです。よろしくお願い致します。

 

 

                             ぴのこ拝