肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

進行がん患者のせん妄に対するアセナピン 舌下錠の有用性に関する後方視的研究

今回は進行がん患者のせん妄に対する対策についてです。せん妄は在宅で看取る際に家族が苦しむ症状の一つではないでしょうか。

進行がん患者のせん妄に対するアセナピン
舌下錠の有用性に関する後方視的研究
前倉 俊也 1,2,相木 佐代 1,2,田宮 裕子 2,3,久田原郁夫 2,4,櫻井真知子 2,5,
吉金 鮎美 2,6
1
国立病院機構 大阪医療センター 緩和ケア内科,2
国立病院機構 大阪医療センター ケアサポートチーム,3
国立
病院機構 大阪医療センター 精神科,4
国立病院機構 大阪医療センター 臨床腫瘍科,5
国立病院機構 大阪医療セン
ター 看護部,6
国立病院機構 大阪医療センター 薬剤部

【目的】進行がん患者のせん妄に対するアセナピン舌下錠の有用性について評価する.

【方法】2019 年 10 月 1 日から2022 年 9 月 30 日までに当院に入院し,せん妄に対する治療としてアセナピン舌下錠を投与された進行がん患者を対象に,その有用性に関して電子カルテを用いて後方視的に調査を行った.せん妄による興奮症状の改善度を評価するために Agitation Distress Scale*(ADS)を用いて評価した.

【結果】解析対象となった患者は 20 例であった.対象となった患者の投与前の ADS 値の平均値(範囲)は 12(4–17),投与後の平均値(範囲)は 7.9(0–18),p 値<0.001であり投与前後で有意な低下が認められた.
【結論】アセナピン舌下錠(シクレスト舌下錠®)はせん妄に対する薬物治療の選択肢の一つとして有用な可能性が示唆された.

Palliat Care Res 2023; 18(3): 177–182
Key words: せん妄,がん,アセナピン,終末期,舌下錠

Agitation Distress Scale:末期がん患者のせん妄の重症度を測定するためのコミュニケーション能力スケールと興奮苦痛スケール