肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

抗がん剤副作用対策 せん妄

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せん妄とは?

 せん妄は、感染や脱水、貧血、お薬など、体に何らかの負担がかかった時に生じる脳の機能の乱れであり、おもに下記のような症状がみられます。
◇ぼんやりしている
◇話のつじつまが合わない
◇場所や時間が分からなくなる
◇夜眠れない、昼間はうとうとしている
◇怒りっぽくなる、興奮したりする

せん妄になるとどのような影響がある?

 せん妄になると、「ぼんやりする」「考えがまとまらない」などの症状が出現します。そのことで、患者さん自身がつらさを感じやすくなると言われています。ご家族も、いつもの患者さんと違う様子に戸惑ったり、どのようにお話ししていいか悩まれる方がいらっしゃいます。
 せん妄になると、患者さんが治療をしたことを忘れてしまったり、混乱してしまうことで、転んでしまったり、大切な点滴のチューブなどを抜いたり、傷つけてしまうことがあります。そのようなことがあると、追加で検査や治療が必要になり、入院が長くなることがあります。

どんな人がせん妄になりやすい?

高齢の人
お酒の量が多い人
認知症、あるいは普段から物忘れのある人
◇視力の低下、難聴がある人
◇以前、せん妄になったことがある人
睡眠導入薬などの眠気が出るお薬を飲んでいる人
上記のような人が、がんの治療をされるとせん妄が起こりやすいといわれています。

せん妄を予防するためには?

◇痛みがあるときは我慢をしないで伝えてください
強い痛みはせん妄の原因になります。痛みがあるときは我慢せずに担当医や看護師に伝えてください
◇水分をこまめに取りましょう
身体の水分が不足するとせん妄になりやすくなります。
◇体を動かしましょう
せん妄を予防するためには、日中動くことが大切です。できるだけ座って過ごす時間を作ったり。散歩をしたり、起きている時間を作るようにしましょう。
◇お薬に注意しましょう
お薬の中にはせん妄の原因になるものがいくつかあります。(オピオイドベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬、ステロイドなと)これまで何年も飲んできたお薬でも、体調が悪いときに飲むと、せん妄を引き起こすことがあるので注意が必要です。
◇いつもの生活に近づけましょう
入院すると、今までの自宅とは異なる生活環境の中で検査や治療をうけることになります。できるだけ周囲の状況が分かりやすくなるように、いつも使っている補聴器やメガネを使用し、時計やカレンダーなどで見当識を補助することが患者の苦痛の除去につながります。

せん妄になった場合はどうしたらいいの?

せん妄は、体への負担を原因とする脳の機能の乱れであるため、負担となった体の問題を取り除くことが治療の基本となります。これに、脳の機能の乱れを改善する薬、患者さんが安心できるような環境の調整を合わせていきます。
①身体症状への対応
 せん妄の原因となる身体要因として、感染、低酸素、脱水、便秘、疼痛があげられます。身体症状を評価し、原因を検索し対応を行います。
②薬物への対応
 薬物への対応として、せん妄の直接因子となる薬剤の中止や減量を検討することと、せん妄の薬物療法を開始することが挙げられます。せん妄の直接原因となる薬物として、オピオイドベンゾジアゼピンステロイドなどがあり、薬物の中止や減量を検討しますが、治療や症状コントロール上、必要となる場合があるので、慎重に検討する必要があります。
 せん妄の薬物療法として、抗精神病薬が標準です。患者の鎮静・催眠が目的ではなく、定期的な治療効果の評価も重要で、せん妄が改善されたら再燃のないことを確認しつつ、抗精神病薬の減量や中止を検討します。
③環境調整
 せん妄の誘発因子として、低活動や難聴、視覚障害も要因となるため、日中の活動を促したり、視覚障害聴覚障害がある場合には、眼鏡や補聴器の使用を勧めます。時計やカレンダーなどで、患者にとって安心できる環境をつくるのは対応において重要です。

以上です。「緩和ケア患者説明ガイド」メディカ出版 2017春季増刊 より抜粋しました。
ぴのこ拝
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