肺がんになった薬剤師(masami)がゲノム医療・緩和医療を学ぶ

ゲノム医療は、高校生物の知識が必要で難しいですが、ボチボチ学びます。緩和医療とはがん初期からの緩和ケアを含み、緩和ケア=あきらめ、死ではない。が持論です。所属する学会の許可を得ましたので、学んだことをつたないながら記事にして行きたいと思います。

子どもをもつがん患者・家族に必要な支援の後方視的検討

緩和医療学会のPalliative Care Research 活動報告からの抜粋です。
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子どもをもつがん患者・家族に必要な支援の後方視的検討

小嶋リベカ、高田博美、石木寛人、木内大祐、里見絵理子
国立がんセンター中央病院 緩和ケアチーム、緩和医療科、看護部

子育て世代のがん患者には、親役割に関連した特有の気がかりがあるが、患者、家族が求める子ども支援の実態報告は少ない。われわれはその支援のあり方を明らかにするために、当院緩和ケアチームによる子ども支援(2013年〜2015年9月)の実際について後方視的(*1)に検討した。対象症例患者は131 例(男性/女性41/90例)、平均年齢43.3歳だった。主な原発巣は消化器、肺・胸膜、乳腺で、進行再発例が約8割だった。子供の総数は239人、平均年齢は9.6歳、相談は患者のみならず、患者の家族(配偶者等)からもされた。主な相談内容として「症状に対する子供の理解と反応」、「親としての思い」、「症状の伝え方」の3つのカテゴリーが抽出された。がん患者および家族の子供に対する相談内容は、病名告知の有無や子供の年齢、反応に応じて多様である。よって、個別のニーズに応じて、多職種との連携を行いながら支援する必要がある。
Palliat Care Res 2019,14(2):73-77

結果及び考察

 当院の入院患者の4人に1人が未成年の子供を持つがん患者である。先行研究において患者はがん告知を受けた段階で、すでに子供にどう伝えるかを気がかりに感じることが明らかにされているが、今回の調査では根治不能進行進行癌や再発患者からの相談が多かった。支援を行った患者および家族の子供に関する相談内容は

①病状に対する子供の理解と反応
②親としての思い
③病状の伝え方

の大きく3つにカテゴリーされた。

*** ①病状に対する子供の理解と反応
<病状理解>
・退院したらもう治ったと思っている
・風邪と同じだと思っている
・何度も「死なない?」と聞く 等
<気がかりな反応>
・何も、聞いてこない、甘える、泣く
・一人になることを嫌がる、病室に入りたがらない、早く帰りたがる 等
<死別後の事>
・死別後にどんな反応をするか

*** ②親としての思い
<申し訳なさ>
・心配かけたくない傷つけたくない
・子供の成長を妨げたくない
・特別な日に一緒にいられない、等
<してあげたい思い>
・そばにいて、親らしいことをしてあげたい
・自分の元気な姿を見せてあげたい
・何か残してあげたい 等

*** ③病状の伝え方
<伝えている場合>
・子供との生活面の変化
・手術の後をどう伝えるか
・子供が外で話してしまわないための対応
・副作用、転移、死別などの伝え方、等
<伝えていない場合>
・病名、病状の伝え方
・質問された際の返答の仕方
・長子には説明済みだが、末子に今後どう伝えるか
・イベント事(受験、等)にいつ告知するか 等

 各相談内容は患者ごとの個別性の高い内容が多く、症例に応じた医療スタッフ間の連携が不可欠である。そしてプライマリーチームとどのように子供を含めた家族を継続的に支援していけば良いかなど、検討する必要がある。多職種カンファレンスの内容として多くあげられたのが終末期、臨死期場面で、どのように医療者が子供の年齢に合わせて対応すれば良いのかと言うことであり、このため、この病期に焦点を当てた教育プログラムが特に求められることが確認された。今後、多施設共同前方視的(*2)観察研究や患者調査を通じ、病院で行う子ども支援の質の向上につなげていく必要がある。
子ども支援を行う際、子供の親がどのような思いか等を早い段階から聞き取り、個別のニーズに応じて多職種間で連携していくことが不可欠であると言える。

(*1)(*2)前方視的研究(prospective study)・後方視的研究(retrospective study) ・・・研究を立案、開始してから新たに生じる事象について調査する研究を前方視的(前向き)研究、過去の事象について調査する研究を後方視的(後ろ向き)研究と呼ぶ。

 私の娘は成人ですが、私の肺がんを知ったとき、「肺がんなら死ぬのが苦しい、かわいそうで胸が張り裂けそうになった」といいます。「今は抗がん剤治療も緩和医療も進んでいるから」と説明・安心させることができましたが、もっと小さなお子さんはがんの病識が全くなく、親御さんの接し方はそれは苦悩を伴うものであろうと思います。親御さん、子どもさんへの多職種連携による支援を願ってやみません。

以上です。
よりたくさんのがん患者さんがより良き「生」を得られますように。
ぴのこ拝
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